SHIMANE VIRTUAL MUSEUM しまねバーチャルミュージアム企画コーナー

石見銀山
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銀山の開発と技術問題解決と発展
坑内の通気と排水
 坑道は地中深く掘られているため空気の循環が悪く、何の対策もなければ酸欠状態になることもありました。 そのため通気をよくする目的で、「煙穴」と呼ばれる地上と坑道を結ぶ通気穴が掘られたほか、「板踏み」や「唐箕(とうみ)」によって空気を送り込みました。また坑道の排水路に板ぶせをして、水の流れによって空気を排気して通気を保つという工夫もなされました。  

 一方、坑道を地中深く掘るにしたがい、地下水が湧き出るようになります。こうした水を処理するために、木や竹で作った「水吹子(みずふいご)」と呼ばれる揚水ポンプを使い、坑道内にたまった地下水が人力で排水されました。
板ぶせ
板ぶせ
鉱山労働と鉱山病
 鉱山の労働は重労働であるとともに、気絶(けだえ)という鉱山労働者特有の呼吸器疾患も大きな問題でした(気絶は他の鉱山ではその症状から「ヨロケ」ともいいます)。その原因は、坑内で灯りとして使うカンテラから出る煙や、鉱石を採掘するときに出る石の粉などを呼吸の際に吸い込み、肺に蓄積してしまうことでした。坑内作業に従事する銀堀などは、30歳になると長寿のお祝いをしたといわれるほど短命でした。

 代官所でも労働者の救済を目的に次のような救護政策を行いました。
・銀山御取囲(ぎんざんおとりかこい):鉱山病のために生活ができない者に対し、1日1人玄米2合宛支給
・御勘弁味噌(ごかんべんみそ):保養薬のために1人に大豆4升と麹2升、塩2升が支給され、山役人が味噌にして支給
・子供養育米:子ども1人に1日米3升ずつ、2歳から10歳まで支給

 また、屋代増之助支配の安政5年(1858)には、備中(岡山県)から医師の宮太柱を呼び「通気管」の改良をはじめ、気絶などの鉱山病の対策にあたらせました。宮太柱の考案した鉱山病対策法は「済生卑言」という報告書にまとめられ、佐渡や生野などの各地の鉱山にも伝えられました。
銀の製錬方法
 製錬とは、掘り出した鉱石から金属を作る技術のことをいいます。石見銀山では以下のような方法で銀を製錬していました。

(1)鏈拵(くさりごしらえ):鉱石から鉱物と不要岩石に選鉱する作業
 掘り出された鉱石には、銀など鉱物を含む部分とそれ以外の部分(素石)があるので、鉱石を「かなめ石」という石の作業台の上に置いて「つるはし」で不要な素石を除きます。次に鉱物部分を「えぶ」という先の尖ったザルに入れ、水を張った半切桶の中で水洗いします。

 半切桶の底にたまった土砂や細かく砕かれた鉱石は「ゆり盆」という栗の木で作られた盆に入れ、水の中でゆっくりと揺すります。
この作業は比重選鉱とよばれ、各物質の比重の差を利用したものです。銀を含んだ鉱石は、土砂や他の不要な鉱石よりも重いので盆の底に沈み、他の不要な岩石はその上層に集まります。この上層に集まった土砂や岩石を取り除いて、底にある鉱石をとります。こうして選鉱された鉱石を「正味鏈」といいます(江戸時代には、一般に鉱石を「鏈(くさり)」といいました)。
比重選鉱
(2)素吹(すぶき):炉の中に鉱石と鉛を入れ、銀と鉛の合金を作る作業
 正味鏈には銀以外の不要な鉱物が含まれているので、銀を取り出す作業が必要となります。
@ 炉の中に炭を入れ火をつけ、正味鏈、酸化マンガンなど鉱石を溶かしやすくするための錬(こわり)、「あえ」という鉛を含む鉱石を入れます。
  A そして吹子で空気を送りながら温度を上げ溶かします。
  B 鉛は銀と結びつきやすい性質(親和性)があるので、鉛と銀の合金=貴鉛(きえん)ができ、他の鉱物より重いので炉の底に沈みます。
  C 炉の表面に浮かんできた他の鉱物を、鉄製の道具でかき出していくと、最終的に貴鉛が残ります。
(3)灰吹(はいふき):素吹でできた銀と鉛の合金を分離する作業
 素吹の工程で作られた貴鉛から銀と鉛に分離する方法を「灰吹法」といいます。
@ まず貴鉛を灰吹炉の上に置き、炭の粉をふりかけて点火します。
  A 次に椿や槙などの生木を炉の上に置いて、そのすき間をぬれた筵でふさいで火気がもれないようにします。
  B やがて温度が上がると貴鉛がとけ始め、吹子によって炉の中に吹き込まれた酸素と鉛が結びついて酸化鉛となります。
  C この酸化鉛は灰にしみ込みやすい性質があるため、次々と灰に吸収されていきます。
  D 一方、銀は灰にしみ込まずそのまま炉の上に残ります。こうしてできた銀を「灰吹銀」と呼びます。
灰吹
(4)清吹(きよぶき):できた灰吹銀の品位を上げる作業
 幕府に納める銀は品位が指定されていました。灰吹までの過程でできた粗雑な銀は定められた品位まで純度を高められた後、代官所へ納められました。
今に生きる鉱山技術
○鉱山だけにとどまらない鉱山の土木技術
(1) 兼六園(けんろくえん)の噴水
 石川県にある兼六園の噴水は辰巳用水(たつみようすい)が利用されており、その辰巳用水は銀堀技術が使われています。
(2)ドーバー海峡
 イギリスとフランス間の海峡であるドーバー海峡を結ぶトンネル工事に日本の企業も加わりました(トンネルの全長は50.5km)。日本の企業はフランス側から掘削を始め、かなりの難工事でしたが、日本の高度なトンネル技術により、工期をはるかに上回る早さで成し遂げました。
ドーバー海峡トンネル
○都市鉱山の技術 Urban Mine
 都市鉱山とは、私たちの住む街中で廃棄された、携帯電話やパソコンなどの電子機器に含まれる金属類を回収、リサイクルすることです。

 秋田県にある同和鉱業小坂製錬所の、黒鉱(くろこう)から鉛・銀・銅を取り出す技術が、都市鉱山技術に生かされています。
 ※黒鉱:鉛・銀・銅など多くの鉱石が含まれています。他の岩石には通常1種類くらいしか含まれていません。

 このように技術が受け継がれて、技術立国を支えているのです。
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